合理的判断のための手法

何らかの決定をするには合理的な決断をすることが大切です。では、どのように考えるのが良いのでしょうか。

いきなり例題

あなたは医師である日腹痛を訴えてきた患者さんを診察することになりました。
簡単な診察の結果、この患者さんは緊急に手術をしないと死亡してしまう病気Aではないかと疑いました。
しかし仮に病気Aでない場合にこの患者さんは手術不要ですが現時点では診断は確定せず、手術を行う以上何らかのリスクは付きまといます。

さて、あなたはこの患者さんに手術を行うという決断をすべきでしょうか。

*ちなみに過去の研究から、あなたが診た診察の所見で病気Aである確率は20%と分かっています。
また、病気Aに対して手術を行ったとき成功して生存する確率は90%死亡する確率は10%、病気Aでなかったときに手術を行うと2%の確率で患者さんは死亡し、残りの98%の確率で生存します。
そして病気Aであったのにもかかわらず手術を行わなかった場合、75%の確率で患者さんは死亡し、残りの25%は生存します。病気Aでなかったときに手術を行わなければ生存率は100%です。

決断樹を使った決断分析

この問題では選択した決断による過程とそれらの期待値からより良い選択を考えようとする方法を採用します。
この方法ではまず、決断樹という図を描いて視覚的に上の問題の情報を整理します。(下の図)f:id:mcharcot:20170503193156p:plain

決断樹では選択(決断)を□、決断によって確率的に生じるできごと(過程)の分岐を○で表現します。そして選択や出来事の内容とその確率を分岐の上に書きます。

このように決断樹を書くと比較的容易に生じるできごとを理解できるようになり、また決断による効果の期待値の計算も簡単になります。

次に、出来事に対して点数をつけるのですが、今回は単純に生存と死亡の二つの結果しかないので、それぞれの出来事の価値を100点、0点とします。
価値は主観的に決めてよいもので今回は便宜的に100と0です。他に「右腕はなくなるが命は助かる」などの中間的な結果が入ってきた場合には患者さんの主観によって30点などと点数付けすれば、最終的には決断による期待値を計算することが可能になります。

この決断樹では手術をすることを選んだ場合

 決断の効果の期待値=0.2x0.9x100+0.2x0.1x0+0.8x0.98x100+0.8x0.02x0=96.4

一方手術しないことを選んだ場合
 決断の効果の期待値=0.2x0.25x100+0.2x0.75x0+0.8x100=85

となり、効果の期待値は手術をした方が高くなるため、手術をすることの方が合理的な決断だと言えます。

感度分析を用いる

では次に、患者さんが病気Aである確率が分からない状況でどういう選択をするべきのかを考えます。
仮にもあなたは医師ですから、確率はわからないとは言っても、「90%以上病気Aだろう」とか「五分五分だろうな」ぐらいの予想はつけることができます。

そこで上の例題で20%とした病気Aである確率をp(ただし0<=p<=1)とします。
すると手術をした際の期待値はpx0.9x100+px0.1x0+(1-p)x0.98x100+(1-p)x0.02x0=98-8p
手術しなかった際の期待値はpx0.25x100+px0.75x0+(1-p)x100=100-75p

p>0.03では98-8p>100-75pが成り立つので確率が病気Aの確率が3%より大きい場合には手術をした方が合理的な選択だと言えます。
つまり病気Aの可能性が50-90%だろうと予測できている場合にはこの方法で判断を考えることができるのです。

この方法は感度分析と呼ばれ、不確定な要素がありその確率の大まかな値が分かっているときに、その範囲内で期待値の逆転が起こるかということを調べる強力な方法です。


以上は医学の分野で応用可能な合理的判断の方法について触れましたが、もちろんマーケティングなどの経済分野にも適用できます。

日常生活で何かの選択に迫られた時に、思い出して使ってみてはいかがでしょうか。


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